むかしあったずもな
ある所に物は分からないが正直な親子三人が、寺の門前に住まっていたど。
あるとき親父が銭、百文持ってお寺の和尚様の所へ行き、和尚様し和尚様し、何でもいいから話を教えてクナさいと頼むと、
『そろりそろりと来たわいナ』
とっこれだけ教えた。次にアッパ(母親)がやっぱり銭百文持って、同じことを言って頼むと、
『そのままそこに立っている』
とこれだけ教えた。次に息子が行って同じようにして頼むと、こんどは
『その者逃がすな追いかけろ、ズッテン、ズッテン』
と、こう教えた。そこで親子三人は毎日毎晩それを繰り返して語っていた。
ところがある夜その家へ泥棒が入ったど。
するととと(父親)が、
『そろりそろりと来たわいナ』
といきなり言った。それを聴いた泥棒は二の足を踏み出しかねていると、それに続いてアッパ(母親)が、
『そのままそこに立っている』
と叫んだ。泥棒は気味悪くなって、後ろを向いて逃げようとすると、息子が、
『その者逃がすな追いかけろ、ズッテン、ズッテン』
と叫んだ。
泥棒はアワを食って一目散に逃げて行ったど。
どんどはれ