むかしあったずもな
あるところに童(わらし)、朝起きると
ああええ夢見た
ああええ夢見た
といったずもな。このワラシア何そんなにいい夢見たが、しゃべってキガセロとアッパ(母親)が言ってもそれでもワラシ
ああええ夢見た
ああええ夢見た
と言ったど、アッパこのワラシァおがしぇぐなったふだって、舟っこさ入れで流したやったど。童が川から海さでてだんだん沖のほうさ流れていぐど、向こう岸の上で鬼どもが見て、あれぁ、人虫ぁ流れで来た、捕って食えでぁと言って鬼どもみんなで海の水呑みはじめだど。おっきな口を開けてどくどくと呑み始めると、だんだん海の水がねぐなって、しまいには鬼の近くまで舟がきたずもな
童は、
ズンズコ
ポンポン
と言って自分のタマっこ叩くと、鬼どもはあははッと笑って、呑んだ水をホギ出したづもな。すると童の乗った舟がまた沖のほうさ戻ったずもな。
ああええ夢見た
ああええ夢見た
と童言ったずもな、鬼どもは今度こそはと、また海の水どっくどっくと呑みだしたど。今度は童の舟たちまち鬼のほうに流れてきてつかまりそうになったずもな。そしたらまた童、
ズンズコ
ポンポン
と言って叩いて見せるとまた鬼どもはあははッと笑って、せっかく呑んだ水みんなホギ出したど。そこで今度は鬼どもは、おまえはええ夢見たと言うがどんな夢見たか聞かせろ。そしたら宝物やっからと言ったずもな。童がそのええ夢の事を話すと、鬼どもは宝物を舟に乗せて童を放したど。その宝物は水の上を渡る浮靴と、死んだ物を生き返せる生針だったずもな。童浮靴を履いて海を渡り陸に着くと馬が死んで人々が騒いでいたど。そこへ童がその馬の傍に行って、生針を刺すと馬は「ヒヒン」と一声嘶いて生き返ったど、人々はびっくりして神様のようにありがたがったど。その馬に乗っていくど、大きな長者の館で一人娘が急病で死んだと言ってみんなオイオイ泣いてらったど。童は私が生き返らせますと言って、その娘に生針を刺すと、これもまた急に目をパッチリ開いて生き返ったど長者どんは喜んで、その童を養子にして娘と夫婦にすることにしたんだどさ
どんどはれ
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