田螺長者 その1
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むかしあったずもな、ある所に大層立派な長者どんがあったど。田地、田畑、山、もあり余るほどあって、ない物はないほどたいしたもんだったど。その長者どんの田んぼを作っている名子の中に、その日の煙も立てて行かれねえほど貧乏な夫婦があったど。夫婦は四十も越していたが、子供がなく、なじょにかして子供がほしいもんだと御水神様へ詣って願掛けをビッキ(蛙)でもツブ(田螺)でもいいから子供をと言ってお願いしたんだど。
ある日女房は田の草取りに行って、いつものように御水神様もうし、そこらにいる田螺のような子供でも良いから、どうぞオラに子供を一人授けて賜もれや、ああ尊度い尊度いと思ったり言ったりしていると、急に腹が痛くなって、なやなやめいて来たど。がまんすればするほど痛くなってとうとうがまんしきれなくなって家さ帰って見ると、夫は心配して、いろいろと介抱をしたが、どうしても直らないので、医者を頼むには金がないし、はてなじょしたらいいかと思ったが、近所のカナサセ産婆(婆様)があったから、すこし違うとおもったども頼んで来てもたらったど。婆様は「これはただの腹痛ではね、ガガは身持ちになって、子供が生まれるところだ」と言ったんだど。それを聞いて夫婦は喜んで、にわかに神棚にお燈明を上げたりなどして、一心に安産させてくださいと願うと、やや一時あって、一疋の小さな田螺が生まれたど。

その二に続く

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